起業家インタビュー

新しい“何か”を始めるみなさんへ

スタートアップスクエア・インキュベートマネージャー
まじゅん代表:宮里護佐丸氏
vol8

スープのお店 まじゅん代表 宮里護佐丸(みやざと・ぐさまる)

1966年に金武町で生まれた宮里護佐丸さんは、幼少時代を具志川市(現うるま市)で過ごします。沖縄国際大学へ進学後、中退。中国・山東省の山東大学へ留学しますが、1989年の「六四天安門事件」の勃発により帰国を余儀なくされます。帰国後は東京の専門学校で整体師の技術を学び、2002年に沖縄で整体治療院を開院。医療事務をしていた奥さま・園子さんとはその頃に知り合い、2004年に結婚しました。その後2012年に整体治療院を廃院し、季節労働や農業研修などを経たのち、2014年からは障がい者の自立支援施設へ勤務。そこでの経験がきっかけとなり、2016年10月に摂食・嚥下(えんげ)障がい者のための介護食宅配を専門とする「スープのお店 まじゅん」を立ち上げました。

「ムース食」を知ってもらうことからのスタート。応援してくれるひとも出てきたので、就労支援施設づくりは諦めません!

 

多彩な経歴をお持ちですが、今の事業を始めるに至ったきっかけは?

まじゅん店舗外観
 

僕が働いていたのは、精神障がい者の自立支援施設です。精神障がいはほとんどが後天性なので、過去にお仕事経験があり、真剣に社会復帰を望んで施設に入所する方がたくさんいらっしゃいます。そうしたみなさんの一生懸命な姿を見ていて、私なりになにかできることはないかという思いが湧いたんです。そこで、社会と障がい者の接点になり得るような事業を始めたいと、同じ職場で働いていた同僚に相談しました。まずは自分たちで事業を立ち上げて、ゆくゆくは障がい者の方をうまく自立に導く就労支援ができればと思っています。

 

摂食・嚥下障がい者向けの介護食の宅配で事業をはじめた理由は?

ムース状のスープの写真



一口に介護食と言っても、実はそれぞれの障がいの度合いに合わせて、食材の硬さや味つけなどにかなり気を使います。一般的な障がい者施設や病院などでは、さまざまな食事を準備しなければいけないこともあり、摂食・嚥下障がいの方には、調理したメニューをミキサーにかけた「ミキサー食」を提供することがほとんどなんです。しかし、これが見ためにも食欲をそそるものではなく、喉を通りにくいというお声もあって。もとの食材の味や見ために近い「ムース食」ならおいしく食べてもらえるのではないかと思い立ったんです。

 

「ムース食」とはどういったものですか?

ムース食写真


それぞれの食材をミキサーなどでペースト状にし、それを天然素材のゲル化剤でムース状に固めて、もとの見ために近づけた材料で作る食事です。妻が日々、試行錯誤を重ねてレシピを考案し、繊維の多い野菜や海藻類、魚や肉類なども食べやすいように工夫しています。ものすごく手間はかかるのですが、これならおいしそうでしょ? 食材はすべてムース状になっているので、もちろん噛まなくても、すっと喉を通ります。しかし、当初はこの見ためゆえに、固形物は食べさせられないと、試食すらしてくれない方もいました(苦笑)。
 

ムース食をどうやって広めたのですか? またその評判は?

宮里さんの奥様、調理中の写真
 

一緒に事業を立ち上げた元職場の同僚がケアマネージャー、栄養士、サービス管理責任者の資格を持っているので、彼女の経験や人脈を生かし、病院や施設関係者などに試食してもらうことから始めました。いただいた意見は妻にフィードバックし、彼女もレシピ研究に励んでいます。最近はお客さまから「食欲が増した」、「食べられなくなったものが食べられて嬉しい」、「食事作りの苦労が減った」といった喜びの声を聞くことも増えました。

 

今後は介護食づくりと自立支援事業をつなげたいとお考えですか

電話対応中の宮里さん



はい。事業が軌道に乗らない時に、お客さまからいただいた喜びの声に、私たち自身が救われ、応援してくれるひとがいるんだと勇気づけられました。就労支援をするうえで、障がい者の方にもこうしたやりがいや自己肯定感を感じてもらうことこそが自立への一歩だと思います。ムース食で楽しい食事のひとときを提供することで、自立を目指す方の支援にもつながるという仕組み作りができれば、こんなに素晴らしいことはないと思うんです。

 

熱い思いをもって歩み続ける宮里さんから、起業のアドバイスは?

平成28年度創業ビジネスコンテスト最優秀賞受賞時の賞状
 

起業する時には、どうしても夢や理想にばかり思いがいってしまうもの。たとえ資金が潤滑であっても、金融公庫からお金を借りるのをおすすめします。手痛い指摘もありますが、そこは融資のプロ。起業する立場では見えていなかった落とし穴が見つかり、いい意味で現実に引き戻されました(笑)。また、市町村や商工会などのセミナーやビジネスコンテストなどにも積極的に参加すると、第三者の冷静な意見が聞けるので参考になるはずですよ。

 

企業紹介

まじゅん店舗外観

 


スープのお店 まじゅん
事業内容:摂食・嚥下障がい者のための介護食宅配事業
開業年:2016年
TEL:098-953-0065
住所:沖縄県浦添市仲間2-4-1
BLOG:http://majun2016.seesaa.net/
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